ブランドの正体:「TUD」は何者か
TUDTOY(The Ugly Duck、以下TUDTOY)は、2022年にロシア・カザンで創業されたコレクタブルアートトイブランドである。創業者は実業家ドミトリー・ポルトニャーギン氏とロマン・チャリィ氏。
ブランド名の由来は、アンデルセン童話の「醜いアヒルの子(The Ugly Duckling)」。この物語から「自分らしさを受け入れて成功する」というメッセージに着想を得ている。
その名の通り「Ugly Duck(醜いアヒル)」をモチーフにしたキャラクターを核とし、**周囲に評価されなかった存在が自己を貫いて大成する**というコンセプトをブランドの精神に据えている。

画像出典:Behance
一体30万円超でも人気を集める製品の特徴
TUDTOYの主力商品は「The Ugly Duck」と呼ばれるアヒル型フィギュア。すべてが限定生産で、各個体には固有のシリアル番号とNFCチップが埋め込まれている。このチップにより、購入者はスマートフォンをかざすだけで真贋を確認できる。

画像出典:TUD公式サイト
最大の特徴は、ハンドメイドによる製作工程と芸術性の高さにある。塗装や造形には職人技が込められ、単なるフィギュアの枠を超えたアートオブジェとしての存在感を放つ。また、素材には再生プラスチックなどの環境配慮型マテリアルも使用されており、サステナビリティを重視する姿勢も見逃せない。
パッケージにも徹底したこだわりが感じられる。専用の高級ボックスには証明書やオリジナルステッカーが同封され、開封の瞬間そのものが体験となる。まさに所有する歓びを味わうための一作である。

画像出典:TUD公式サイト
唯一無二のコラボ戦略が生む魅力
TUDTOYの人気を支えるもう一つの要素が、著名ブランドやアーティストとのコラボレーションである。「自らの道を突き進み成功を収めた者たち」との協業により、各作品には強いストーリー性が宿る。

画像出典:TUD公式サイト
例えば、マイク・タイソンとのコラボでは、彼の異名“Iron Mike”を体現した金属的デザインが採用された。マイケル・ジャクソンモデルでは、シルバーボディに“King of Pop”の刻印が入り、音楽界の偉人に対するオマージュが形となった。さらに、フリーダ・カーロ、ジャン=ミシェル・バスキア、Pantone、チュッパチャプスなど、多彩なジャンルとの融合を実現している。

画像出典:TUD公式サイト
コラボごとにテーマやデザインが全く異なる点も特徴であり、各作品が単なるフィギュアではなく、一つの物語を語るアートピースとして成立している。
顧客層と人気の理由
TUDTOYの主な購買層は、20~40代の富裕層やクリエイティブ志向の高い層である。自己表現やステータスの一環としてアートトイを選ぶ人々にとって、TUDTOYはまさに「語れるプロダクト」として機能している。

画像出典:TUD公式サイト
SNSを中心としたファンコミュニティも活発であり、限定フィギュアの開封動画やコレクション紹介が数多く投稿されている。価格帯は高額ながらも、「アートとしての価値がある」「将来的に資産価値が上がりうる」といった観点から投資的な注目も集めている。

画像出典:TUD公式サイト
既存のアートトイファンはもちろん、本ブランドをきっかけにこの世界に足を踏み入れた新規コレクターも多い点がTUDTOYの影響力の大きさを物語っている。
売上と成長性──なぜ売れ続けているのか
TUDTOYの成功は、単に商品の魅力にとどまらない。「売れる分しか作らない」という限定生産のビジネスモデルが、希少性を生み出している。
例えばチュッパチャプスとのコラボでは350体×2種、合計700体で約2.5億円を売り上げた。直営ギャラリーの開設や、ミラノ・サローネ、メゾン・エ・オブジェなど世界的展示会への出展を通じ、グローバル市場でも注目を集めている。

TUD x Chupa Chups|画像出典:TUD公式サイト
アートトイ市場そのものも拡大傾向にあり、その中でTUDTOYは物語性・品質・ラグジュアリー性を武器に確固たる地位を築きつつある。
日本市場での展開と今後の可能性
2025年4月現在、日本にはTUDTOYの直営店は存在せず、知名度も限定的である。しかし、日本にはBE@RBRICKや海洋堂に代表されるアートトイ文化が根付いており、潜在需要は高いと見られる。

日本で根強い人気を誇るアートトイBE@RBRICK|画像出典:BE@RBRICK公式サイト
公式サイトを通じての国際配送は可能であり、既に一部の国内コレクターには認知され始めている。韓国への進出実績もあることから、日本展開は時間の問題であり、今後の展示会参加やポップアップイベント開催などが期待される。
TUDTOYが掲げる「異端でも自分を貫け」というメッセージは、質にこだわる日本の大人たちにも深く響くだろう。

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